野球はバッターとピッチャーの読み合いの勝負とも言えます。

 

相手のピッチャーはどんなコースを突いて来るのか?
どんな変化球を投げてくるのか?

 

そうした読み合いの末にバッターはバットを振るい、
打ったり打ち取られたりするわけです。
(もちろん野球の読み合いはこれだけではありませんが。)

 

しかし、ふと冷静になって考えてみると

「変化球って何で変化すんの?」

という素朴な疑問が浮かんできます。

 

ピッチャーの手元を離れたボールが、
空中に右に曲がったり左に曲がったり、
いきなりストンと落ちてみたり。

 

一体何故こんな理不尽な現象が起きるのでしょうか?
魔術か何か何でしょうか?

 

なべざらし

ということで、今回はそんな変化球についての雑学をご紹介していきますよ。

 

 

変化球の原理はマグヌス効果

何故野球の変化球というのはピッチャーの手から離れ、
キャッチャーミットに収まるまでの間に
軌道が著しく変化してしまうのでしょうか

 

実はこれは、「マグヌス効果」という現象がその原因なんだそうです。

 

マグヌス効果というのは、1852年にドイツの科学者である
ハインリッヒ・グスタフ・マグヌスさんによって発見された物理現象のことです。

 

今回はマグヌス効果を、
野球の球種であるストレートを使って
説明していきたいと思います。

 

ストレートというのは基本的に、
ただ全力で投げると言うわけではなく
バックスピンがかかった球のことです。

 

例えばピッチャーがキャッチャーに向かってストレートを投げたとします。

 

この時ピッチャーとキャッチャーの間には当然ですが「空気」があります。
ボールはこの空気の壁を押して進んでいくわけです。

 

ボールに当たった空気と言うのは、
一瞬ボールの表面に張り付き、そして分散していきます。

 

 

この空気がボールに張り付く時に、
ボールには空気抵抗による力が加わり、
軌道が変化していきます。

 

ボールに空気抵抗が働く時は、
ボールの回転している方向によって

 

・ボールの中でも空気抵抗が特に強く働く部分
・逆にあまり働かない部分

というのが出来ています。

 

例えば、ストレートの場合はボールにバックスピンがかかっているので、

・ボールの上の方=空気の流れに沿った回転なので抵抗が少ない
・ボールの下の方=空気の流れに逆らった方向に回転しているので抵抗が強い

ということになり、空気抵抗の働き方にもムラが出来るわけです。
そしてこのムラが変化球の秘密です。

 

ストレートの場合、前述の通りボールの下側に強い空気抵抗が働きます。

 

すると、その強い空気抵抗の影響でボールには上に浮き上がる力が働きます。

 

逆に、ボールにトップスピンがかかっていた場合は、
ボールの上側に強い空気抵抗がかかることになるので、
下に落ちる力がかかることになるでしょう。

 

投げられたボールを真上から見た時に、時計回りの回転がしているなら、
ボールの左側に強い空気抵抗がかかっていることになるので右に

 

投げられたボールを真上から見た時に、反時計回りの回転がしているなら、
ボールの右側に強い空気抵抗がかかっていることになるので左に曲がります。

 

空気や水などの流体の中を回転がかかったボールが移動する際にかかる
こうした力のことをマグヌス効果と呼ぶそうです。

 

なべざらし

ちなみに今回の説明は何とか分かりやすく説明出来ないかと思って、なべざらしなりに噛み砕いた解釈をしているから厳密には違うと思いますが、とりあえず変化球が変化する仕組みはこんな感じです。

さぼすけ

マグヌス効果を調べてみると、学の無い俺達には難しすぎる公式や単語が出てきたりするので、何て言って良いのか分からなかったんだ…。

なべざらし

まあ言うて俺達アザラシとサボテンなんだし、難しい公式の説明なんて無理なんですわ。

 

 

 

ストレートも実は変化球の一種!

前述のマグヌス効果の説明の例としても出したストレートですが、
このストレートもバックスピンという回転をかけているので、

単なる真っ直ぐ投げるだけの球種というわかではなく、
「上方向への変化球」という風に考えることが出来ます。

 

よく豪速球を得意とするピッチャーのストレートは
「手元でホップした!」と言われることがありますが、

これは強い空気抵抗とバックスピンによってボールに上方向への力が働き、
浮いたように見える、あるいは本当のちょっと浮いてるんだと思います。

実際、ストレートという球種には
ただ投げるよりも重力による落下が少ないという特徴もあります。

 

なべざらし

『大き〇振りかぶって』という野球漫画の主人公は、球速は遅いのに落下がすごく少ないストレートが特徴でよく相手打者を困らせてます。

さぼすけ

また、優秀なピッチャーに贈られる『沢村賞』の由来となった名投手である『沢村栄治』選手も、あまりの豪速球で『ボールが打者の手元で浮き上がった』と言われていたそうです。

基本的に物と言うのは下に落下していくものなので、落下ならまだ予測が出来るかもしれませんが、手元でボールに浮かれたら相当打ちにくいかもしれません…。

 

回転をかけないことで変化させる変化球もある?

先ほどご紹介した例とは別に、逆にボールに極力回転をかけないことで
軌道を変化させるという変化球もあります。

 

例えば、決め球として多く用いられるフォークや、
ナックルボールなどがその良い例です。

 

回転をかけない場合、ボールの前面全体にそのまま空気がぶつかることになります。

 

そのため、ボールの勢いが途中で弱まり、
ストンと落ちる変化球になるわけです。

 

一口に変化球と言っても、
様々な切り口から開発されているといのがまた面白いですね。

 

なべざらし

スットーンと大きく落ちるフォークが決め球の投手ってかっこいいよね。

 

史上初の変化球は何?

 

マグヌス効果というちょっと小難しい現象によって変化球は成り立っていますが、

・この変化球を最初に考案したのは一体誰なのか?
・最初に出来た変化球とは一体なんなのか?

ちょっと気になるところなのでご紹介していきます。

 

初めて変化球を開発した方は、1870年代のアメリカで活躍した
「ウィリアム・アーサー・キャンディ・カミングス」選手と言われています。

 

そして、野球界に初めて現れた魔球の名は「カーブ」です!

 

カーブというのは、投手の利き腕とは逆の方向に
大きく曲がりながら落ちていくという変化球です。

 

ちなみにこのカーブは何故出来たのかと言うと、
ウィリアム選手が子供たちが貝殻を投げて遊んでいるのを見て、
貝殻が曲がって飛んでいくのを参考に考案したんだとか。

 

この史上初の変化球であるカーブを目の当たりにした時は、
観客もバッターも相当度肝を抜かれたんだとか。

 

ウィリアム選手この魔球カーブを使って大活躍し、
当時下手投げしかなかった環境では難しかった完封勝利を
3回も行ったんだそうです。

 

また、このウィリアム選手からカーブを伝授されたトミー・ボンド選手も、
3年連続40勝という大成績を残したんだとか。

 

この史上初の変化球の開発に成功したウィリアム選手は
その功績を讃えられ、アメリカ球界で殿堂入りを果たしたそうです。

 

なべざらし

今でこそポピュラーな変化球となっているカーブだけど、当時は物理法則を無視した悪魔の所業と思われていたかもしれないね。

さぼすけ

悪魔の球、まさしく魔球ですな。

 

シュート回転の球は何故悪いと言われているのか?

投球

よく知られている変化球の一つに、
「シュート」というものがあります。

 

シュートというのは、
ピッチャーの利き腕方向に曲がる変化球の一種です。

 

このシュートですが、変化球の一つとして
効果的に運用するならバッターをほんろうする武器になりますが、

ストレートのつもりで投げた球に意図せずシュートに近い回転がかかってしまう、
いわゆる「シュート回転」は悪とされる風潮があります。

 

これは一体何故なのか?その理由を方々で見てみると

・右投げ投手が右打ち打者の外角に投げた時にシュート回転がかかっていると打ちごろの球になってしまうから
・フォームが崩れて体が開いている証拠なので、球の出所が見やすく球種やコースを予測されやすい
・意図して投げているシュートじゃないので、コントロールが定まっていない証拠
・シュート回転は当たると良く飛ぶから

などなどの意見があるようです。

 

強いピッチャーの要素の一つとして、
球の出所が見えにくい(球持ちが良い)というのもあります。

 

やはりどんなすごい球を投げる投手でも、
バッターは球種さえ事前に分かれば対策を立てやすく、

逆に球種が分からなければ対策も立てにくいので、
もしシュート回転=体が開いていて出所が見えやすいというのが本当なら、
大きなハンデとなってしまうかもしれません。

 

ピッチャーをやる際は自分はシュート回転になってないか?
他の人に確認してもらうといいかもしれませんね。

 

変化球の種類一覧

 

では最後に、有名な変化球をいくつか
ざっくりと紹介していきたいと思います。

 

カーブ:

・前述の通り史上初の変化球
・投手の利き腕とは逆方向に曲がりながら落ちる
・スローカーブなどの派生も豊富

 

シュート:

・前述の通り、投手の利き腕方向に変化する球

 

スライダー:

・投手の利き腕とは反対の方向に滑るように曲がる球
・縦に落ちるVスライダーや、球速の速い高速スライダーなどもある

 

カットボール:

・球速が速く変化が小さいスライダーに近い球種
・ボールを切るように投げることから名前がついた

 

フォーク:

・縦に落ちる変化球
・人差し指と中指でボールを挟んで投げるという特異な握り方が特徴
・回転をつけて変化させるのではなく、回転を押さえることで空気抵抗を強めて縦に落とす仕組み

 

チェンジアップ:

・ストレートと同じような腕の振りなのに球速が遅い「奥行きの変化球」
・ボールを鷲掴みにするなど、力があえて伝わりにくい握り方をするのが特徴
・緩急をつけて相手を翻弄するのに使われる

 

ナックルボール:

・ボールをほぼ無回転で投げることで不規則に変化しながら落ちる変化球
・ふらふらと揺れるように落ちるので軌道が非常に読みにくい
・指を突き立てるようにボールを握るのが特徴

 

シンカー:

・投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球
・右投げ投手が投げればシンカー、左投げ投手が投げるとスクリューと呼ばれる

 

ストレート:

・直球と言われるが、単なる速い球ではなく上方向への変化球ともとれる
・ボールが一回転した時、4回縫い目が通るように握ることからフォーシームとも言われる

 

ツーシーム:

・若干沈む軌道の速球のこと
・一回転した時、縫い目が2回通るように握ることからこの名前がついた

 

なべざらし

また、これらは変化球のほんの一部にしか過ぎません。変化球は人によってボールの握り方が違ったりして、その度に別の名前がついたりもしますので、同じような軌道でも名前が違ったりするものはたくさんあります。

さぼすけ

変化球は人の数だけあるってことだな。

 

 

変化球まとめ:変化球は選手たちの試行錯誤の結晶なんだなぁ

 

野球を複雑で高度な読み合いのスポーツにしている重要な要素である変化球ですが、
その成り立ちや現在様々な変化球が開発されていることを考えると、
選手達は本当に野球が好きで、野球に関する研究に余念がないんだなぁと思わされます。

 

また、なんとなく「回転がかかってるから曲がるんでしょ?」
程度の認識だった変化球の原理を少し理解出来たのも面白かったです。

 

これからも技術の進歩によって、新たな変化球は生まれてくると思います。

どんな魔球が生まれるのか今から楽しみですね!

 

なべざらし

いつか分身魔球を投げれるようになって球界に旋風を巻き起こしたいと思います。